大正壱拾弐年(西暦壱千九百弐拾参年)五月六日(日曜日)仏蘭西(フランス)帰りの友人が遺したものは地下室に眠る純白の少女‘ユヌ・フィーユ・ブランシュ’だった……。欧州大戦が終わり、狂ったような好景気の後、必然として襲いかかって来た不況に世相は騒然とし、今にも革命が起きようか、と言う時代。主人公・矢旗澤政重子爵は、何の不自由もなく、また何の刺激もない境遇で、無為に日々を過ごしていた。そんな折、ここしばらく屋敷に籠っていた友人・織田桐治道伯爵が不意に屋敷へ来るようにと招待状を送ってくる。同じく屋敷に招かれた義妹・矢旗澤香純と旧来の友人・眞山皐之介とともに織田桐邸へ向かったが、そこで彼らが目の当たりにしたのは、治道の突然死だった。後日、政重は織田桐邸の怪しげな執事・キャリバンから、治道が政重に宛てたという遺産を受け取ることになる。それは、織田桐邸の地下室に安置されている不思議な少女だった。政重が眠る少女の耳元で言葉を囁くと、少女は蒼い瞳を開き「ごしゅじんさま……」と言い、あたかも花が綻ぶように笑った。そして、執事は、御主人様は少女に何をしてもいいのだ、と告げた。