「今、助けるからな!」周囲に張り詰めた静寂を打ち消すように、俺は乱暴にドアノブを回す。開かない。両手でノブを握り、渾身の力を入れて回す。開かない。気が狂ったように何度も回し続ける。開かない。「(鍵が必要なのか…!?)」だが、今更探しに行っている時間はない。開かない。開かない。開かない。開かない。「イヤァアアアアアアアッ!!」扉の向こうから鼓膜を切り裂くような彼女の慟哭が届く。凍りつく指先、痺れる体、込みあげてくる嘔吐感。焦る思い、湧き上がってくる激情。「絶望」という名の悪夢が俺の体を包み込む。頭の中で人の形をした悪魔が薄笑いを浮かべている。どうする事も出来ない。すぐ近くにいるのに。囚われた君は、もう戻らない。戻らない。俺の叫びは届かない。もう、届かない。永遠に…。