好景気に沸く1991年。東京の私立W大の人文学部に通う、主人公の加茂在憲(かも・あきのり)は、卒論のテーマに選んだ「摂関政治」に関するフィールドワークの一環として、夏休みを利用して、同じ民俗学ゼミに所属する友人の阿部泰親(あべ・やすちか)、中宮聖子(なかみや・せいこ)、堀河斎(ほりかわ・いつき)、そして一行のお目付役として、ゼミの研究員である三条操(さんじょう・みさお)、さらには泰親の妹の阿部音羽(あべ・おとは)までが押しかけるという大所帯でW県へと出かけた。フィールドワークとは旅行のための建前で、本当はバカンス気分でキャンプ生活を楽しむつもりの一行だったが、ふとしたきっかけから、その土地にまつわる奇怪な現象に悩む地元の人たちと知り合い、相談を持ちかけられてしまう。ひとりは建設中のリゾートホテルのオーナーで、怪奇現象が頻発するのを理由にホテルの工事予定が遅れていることを腹立たしく思っているとのこと。そしてもうひとりは、ホテルの建設を請け負っている工事事務所の現場監督で、実際に怪奇現象が頻発するため、作業員たちが怯えてしまっており、工事が進まずに悩んでいる、とのことであった。ゴーストバスターズでもあるまいに…とは思ったが、どちらの依頼を受けても宿泊場所や食事の提供は受けられるし、フィールドワークも進められるので、ある意味渡りに船と気楽に考えていた一行であったが、徐々に一行の周辺でも奇怪な現象が発生するようになり、追い詰められていってしまう。しかしそれは、真の恐怖の序章でしかなかった……。