人助けが趣味な優しいさとり鬼――若彦(わかひこ)は某日、妙な噂を耳にする。それは妖怪の暮らす世界、タソガレで人々の邪気が集まる里があるという話。もしかすると、人の子が迷いこんでいるのかもしれない――。様子を見に行こうと噂の里を訪れる若彦だったが、強烈な邪気にあてられ気を失ってしまう。数刻後……見慣れぬ屋敷の中で目を覚ました若彦は、とある違和感を覚えた。「わ、わしの身体が……女子(おなご)のようになってしもうた……!」――そう、若彦が侵入したのは『あやかし幻楼』。妖怪遊女との情交を求め、男達が日々通う遊里――。人間の煩悩によって姿形を変える若彦は、遊郭に蓄積した邪気によって女になってしまったのだ。「百人分の邪気を集めれば、元に戻ることが出来る――」幻楼の楼主からそんな話を聞いた若彦は、遊女として働くことを決意する。男の子(おのこ)から女の子(めのこ)へ、そして遊女へ。果たして若彦は元の身体に戻ることが出来るのだろうか――。