本土西端の海上に建設された人工都市「千砂倉」――。それはバブル絶頂期に計画され、そして頓挫した一大アミューズメントパークを利用し、高級リゾート地として整備した街である。街の中央部には、「佐伯邸」と呼ばれる洋館が建っており、“七瀬しずる”はその地下で目を覚ました。まどろんだ意識の中、ふと気付けば自分に寄り添う二人の美少女、“麻由”と“麻奈”――。しどけなく裸体をさらした彼女達に、しずるは血を吸われ、そして肉の快楽を与えられた。自分は誰なのか……。何故、こんなところにいるのか……。いくつもの疑問は、溶け込むように魅惑的な血の香りと、快楽的な衝動によって打ち砕かれた。過去の記憶など思い出したところで意味はない。――「せっかく吸血鬼になったんだ。それなら吸血鬼の愉しみ方ってもんを、味わわせてもらうまでだぜ」。不死身の肉体を手に入れたしずるは、そう言ってほくそ笑んだ。