両親が他界し、僕は学園を中退した。出稼ぎの為に一人で上京し、そろそろ二年ほど経つ。しかし先週、唯一の保護者だった祖母も他界してしまい、僕は一旦実家へ戻って、学会の指示の下で葬儀を行った。そこで妹の『まどか』とも相談し、二人で上京する経緯になったのだ。妹の受け入れ準備を整えるため、僕だけ先に東京へ戻る。そして、今……。夕暮れ時の駅前で、まどかの到着を今か今かと待っていると……。【まどか】「お兄ちゃん、お待たせ」振り向けば、そこにまどかが立っている。僕の……この世で一番大切な妹、まどか。一日たりとも、まどかを思わなかったことはない。まどかを思うと胸がキュンとする。僕は今後の生活に期待を抱きながら、まどかを狭いアパートへ連れて行った。その晩は、まるで両親と一緒に住んでいた頃のような、楽しい時間を過ごすことが出来た。しかし……翌日。午前中はまどかに駅前を案内し、昼食後はまどかと別れて、そのままバイトへ向かうつもりだった。だけど横断歩道で、信号が青に変わったその時!まどかは急に身体を痙攣させて、横断歩道のド真ん中で倒れてしまった!僕は情けないことに、まどかの身に何が起きたのか分からず、まどかの名前を連呼するだけだった。そこへ車から、美しい女性が駆け寄り、「さぁ!車に乗せるから手伝いなさい!そっとよ!慎重に持つのよ!早く!」その女性は、まどかと僕を車に乗せて、渡来総合病院へ連れて行ってくれた。お医者さんが仰るには、まどかの症状は心労による貧血で、とくに心配はないと診断してくれたけど……。その女性は、『MRI検査、血液検査、尿検査も行ってください』と、親身になって検査要求をしてくれた。だけど、特に何の異常も見つからず、僕とまどかは帰宅することに。その女性は、僕とまどかを喫茶店に寄らせて、名刺を渡してくれた。……さらに、「お医者様は貧血と言ったけど。まどかちゃんの症状は、私が発症した初期症状にソックリだわ。このお薬を飲みなさい」と言って『マッド329』という錠剤を渡してくれた。「私のお薬をあげる。これを飲みながら、幸せになることを誓い合いなさい。このお薬を飲ませたあとは、『愛の催眠』を仕掛けるの。その行為がまどかちゃんのポジティブ思考を呼び覚まし、麻痺した自律神経を正常に戻してくれる筈だわ」そして、その晩。僕は早速、『マッド329』をまどかに飲ませて、就寝しようとする。しかし……まどかは、そのとなりで……。