その昔、山に2匹の猫又が住んでいた。白猫の雄は気が優しく温和、黒猫の雌は気性は荒く快楽を好んでいたので、夜な夜な人間の男の夢に現れては精を喰ってその味に酔いしれていた。何人もの村人が黒猫の夢に捕らわれ、精気を吸われて衰弱死しているのを知った白猫は黒猫に警告する。「俺の夢に現れてもいいから、もう人の子の精気を喰うな」しかし、警告を聞かずに尚も喰い続けた黒猫は、とうとう村人に捕まってしまう。広場で火で炙られようとしたその瞬間、白猫が現れ黒猫を助けるも、今度は白猫が村人が放った矢で倒れてしまう。炎に巻き込まれ燃えていく白猫が黒猫に向って叫ぶ。「いいからお前は逃げろ!絶対に生まれ変わって会いに行くから…俺はお前が…!」しかしその後の言葉は村へ燃え移った炎の音と、村人に悲鳴に掻き消された。お前が…その後の言葉が聞きたくて、贖罪のように黒猫は長い時を生き続けていた。現代、幻想動物専門店『来夢』の店長サーヤは、交通事故に遭ったある一人の少年を助ける。彼の名前は『細嶋陸』。日本人には珍しい、日に透けるような銀髪に青い瞳。白猫とそっくりの容姿。生まれ変わって巡り逢った少年には、白猫の記憶はなかった。